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「美術館」「博物館」の違い

夏休みになると子供と一緒に博物館に行ったりする人も多いと思います。

自分も30代半ばの年齢になって美術館の魅力が分かるようになりました。

そんな時ふと疑問に感じたことがあります。

「美術館と博物館の違いって何なんだろう?」

子供から聞かれた訳ではないですが、何となくは分かっても明確に答えることが出来ない自分がいることに気付きました。

 

この記事ではそんなふとした疑問をハッキリとさせて、明日、人に話したくなる記事を書いています。

 

是非、話しのネタになったら嬉しいです!

 

 

 

「美術館」「博物館」の違い

結論から言うと、法律上では「美術館」と「博物館」に違いはありません

博物館法という法律があり、

「博物館は、歴史・芸術・民俗・産業・自然科学等に関する資料を収集し、保管し(育成を含む)、展示して教育的配慮のもとに一般公衆の利用に供し、
その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせて、これらの資料に関する調査研究をする機関である〉とされており、
美術館・資料館・動物園・植物園・水族館・科学館などのすべてを包含して博物館と規程している」

と法律で定まっています。
つまり、「博物館」の中の一つが「美術館」だということです。

Image from Gyazo

一般的に博物館という場合には、美術館、動物園、植物園、水族館などとは区別されている。

 

施設数の違い

博物館には一定の要件を満たした「登録博物館」、要件の緩い「博物館相当施設」、同法の縛りを受けない「博物館類似施設」がある。

種別 登録要件(設置主体) 設置要件 登録又は指定主体 館数
登録博物館 地方公共団体,一般社団法人,宗教法人など ・館長,学芸員必置
・年間150日以上開館など
都道府県教育委員会,指定都市教育委員会 914
博物館相当施設 制限無し ・学芸員に相当する職員必置
・年間100日以上開館など
都道府県教育委員会,指定都市教育委員会※1 372
博物館類似施設 制限無し 制限無し※2 なし 4,452

※1博物館の設置主体が国・独立行政法人・国立大学法人の場合は国 ※2「社会教育調査」上は博物館相当施設と同程度の規模を持つ施設

(出典)社会教育調査

「博物館相当施設ってなに?」と疑問がわきますが、
博物館行政上は、「法律的に認められていない」博物館のことを「博物館類似施設」と呼んでいます。

法律上「博物館」ではなくても、博物館活動を行うことは勿論、博物館と名乗ることも一切禁止されていないということです。
これは、法律に基づかない施設の活動が禁止されている「銀行」や「病院」とは異なるところです。
ですから、一般常識的に「どう見ても“博物館”」というものが、法律的には博物館では無かったりするわけです。

全国の美術館数は1,064館
1位 長野県 110館
2位 東京都 88館
3位 静岡県 53館

長野県全体がリゾートのような印象で、安曇野には「安曇野ちひろ美術館」や「北アルプス展望美術館」、美ヶ原には「美ヶ原高原美術館」、蓼科には「蓼科テディベア美術館」などがあります。

美術館には、選び抜かれた作品を保管し、人々に鑑賞の機会を提供することで多様な文化・歴史・感性があることを知らせる役割があります。
加えて、美術作品は外交や交流の成果、地域振興の要にもなり、いわば人類全体の共有財産にもなるものを保管する役割があります。

 

全国の博物館数は4,310館(総合博物館、科学博物館、歴史博物館、野外博物館の合計数)
1位 北海道 284館
2位 長野県 243館
3位 東京都 187館

世界の博物館・美術館関係者による世界大会が19年9月、京都市で開かれました。
「文化をつなぐミュージアム」がテーマとして掲げられ、最終日には「博物館は文化の結節点であるとの理念を徹底しよう」との決議文が日本から提案され、採択されました。

美術館・博物館を含めて、ただ鑑賞するのではなく文化を繋ぎ地域振興にも貢献していることが分かります。

 

陳列物の違い

美術館でも「美術博物館」と「絵画館」に分かれます。

絵画、彫刻、工芸のほか、考古学的遺物や武具、服飾品などを含む美術博物館ともいうべき性格のものと、
絵画のみを扱う絵画館(ドイツ語でピナコテークPinakothek)、彫刻専門の美術館(グリュプトテークGlyptothek)があります。

日本で人気の美術館は、

1位:金沢21世紀美術館(石川県)
2位:三鷹の森ジブリ美術館(東京都)
3位:国立新美術館(東京都)
4位:箱根彫刻の森美術館(神奈川県)
5位:国立西洋美術館(東京都)

となっており、観光の名所ともなっています。

 

博物館は、歴史・芸術・民俗・産業・自然科学などに関する資料を収集・展示して一般公衆の利用に供し、
教養に資する事業を行うとともに資料に関する調査・研究を行う施設とされています。

日本で人気の博物館は、

1位:福井県立恐竜博物館(福井県)
2位:広島平和記念資料館(広島県)
3位:国立科学博物館(東京都)
4位:長崎原爆資料館(長崎県)
5位:名古屋市科学館(愛知県)

博物館の陳列物は施設によって様々で、歴史や文化を学ぶ施設に多くの人が足を運びます。

 

職員の違い

日本では「学芸員」とよばれる専門職員が業務を担当します。

「学芸員」の職については、博物館法(昭和26年法律第285号)の第4条第3項に定めがあり、「博物館に、専門的職員として学芸員を置く」とされている。
つまり、国家資格が必要とされています。

次の4つの条件のいずれかを満たせば、学芸員資格認定試験を受けることができ、それに合格すれば学芸員の資格を得ることができます。

  1. 学士である
  2. 大学に2年以上在学し決められた単位を62以上修得し2年以上学芸員補として働いた者
  3. 教職員の普通免許を持ち2年以上教職員として働いた者
  4. 4年以上学芸員補として働いた者

「学芸員補」という職もあり、「学芸員補」は学芸員の職務を助けるために博物館におかれる職である(博物館法第4条第5項・第6項)
専門職員は、アメリカではキューレーターcurator、イギリスではキーパーkeeper、フランスではコンセルバトゥールconservateurなどと、
各国によって呼称・業務の内容につき差異があります。

 

「博物館で働いている人ってすることなさそうで、楽そうでいいな~」

 

なんて思っちゃいますが、実は難関な国家資格を有するエリートの人なんです。

美術館の学芸員の業務

日本の学芸員は、多様な業務を集約して果たさなければならない場合が多い。
そのため、実際には、人手不足の折、力仕事までこなす例もよくあるが、これも館の性質や人員体制、業務内容によって異なる。
高価な大作の運搬、移動、取り扱いから、キュレーションに至っては一番作品に肉薄しつつも緊張感を迫られるような立場にある。
展覧会中は、実際キュレーションをしつつ接客応対しながら次の展覧会の展開を練り、終わったらその準備の蓄えの総てでもって次の展示を即座に開始し、
その間にも常設の内容を微妙に変えたりするという忙しさにある。

 

博物館の学芸員の業務

学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる(博物館法第4条第4項)。
一般に、学芸員が行う職務の類型は、研究・調査、収集・展示普及、保存・管理とされ、展示普及においては社会教育施設における教育従事者としての立場も含まれる。

いずれにしても、どちらの業務も大人数で対応するわけではないので大変なのは確かです。

 

歴史の違い

今日の博物館の名称である英語のミュージアム"museum"は,前3世紀エジプトのアレクサンドリアに設けられた総合学術機関ムセイオン"mouseion"に由来します。

ヨーロッパでは近代的博物館が生まれたのはルネサンス以降のことで、このころ、古書、古銭、メダル、化石などを収集整理する施設が各地に現れました。
18世紀半ばにはロンドンに大英博物館が開かれ、さらにフランス革命後パリのルーブル博物館(美術館)が公開され、他の各国でも博物館開設の動きが強まったとされています。

このことから、博物館という大きな括りの中に美術館があることも理解できます。

日本では明治維新後の1871年(明治4年)、文部省に博物局が置かれ、1872年〈文部省博物館〉の名で、収集資料を湯島聖堂で公開され、
これが現在の東京国立博物館および国立科学博物館の母体となったとされています。

世界でも日本でも、発端は歴史的な収集資料から博物館が生まれ、そこから派生して美術館や資料館、そして動物園、水族館などまで出来ていったことが考えられます。

 

まとめ

筆者の中で非常に興味深かったのは、
博物館には一定の要件を満たした「登録博物館」、要件の緩い「博物館相当施設」、同法の縛りを受けない「博物館類似施設」があることです。

わざわざ「登録博物館」や「博物館相当施設」になる意義は何なのか?と調べたところ、
「登録博物館かどうか」に関係無く「財団法人・社団法人・宗教法人」が一般的に優遇されている例が多いようです。

  • 寄附金を受けるときに寄附する側に優遇措置
  • 相続財産を「科学又は教育の振興に寄与するところが著しい公益法人等」に贈与した場合に相続税を課さないとする規定
  • 「博物館類似施設」でも輸入目的が合っていれば免税

国税関係で法令レベルの規定で「登録」である意味があるのは、以上のような理由があることです。

 

ではではまた。

 

 

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参考資料:

都道府県別統計とランキングで見る県民性:「都道府県別美術館数」

tripnote:全国の人気美術館TOP10!旅行好きが行っている美術館ランキング

じゃらん:全国の博物館ランキングTOP10

戸田孝の雑学資料室:博物館相当施設って何?

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